109果てしなきドナウの流れ

109 Unlimited stream of the Danube

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ドブルジャ山地に阻まれて、北上してきたドナウ川は、ブライラのあたりで、直角に曲がり、また、東へと進路を変えます。今、ドブルジャ山地の北の端を走っています。

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岩山です。これでは、ドナウ川も、南北にはしる山地を、突破できなかったわけです。

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サイクリング・ルートである、街道22/E87号線は山の中や、その中腹を走ります。時々、眼下に広い平野が見えます。あそこを走ることが出来たら、楽だろうと思うのですが、しかし、そこには、道や集落はありません。おそらく、ドナウ川の氾濫を避けて、道や集落はないのでしょう。

こんな記述を、見つけました。
「フルショバの辺りから先になると、ドナウの景観はスケールが大きくなる。本流から、分流が、さらにそこから支流が出て網の目のように拡がっている。川の真ん中には大小の島々、岸に沿っては沼や池や湖が無数に点在する。もちろん村落など見当たらず、人間の生活はまったく感じさせない。原始のままの自然があるだけである。そんな中を、ドナウ本流は、500メートルほどの川幅をなして流れる。だが一度洪水に見舞われると、この一帯は、幅20キロにわたって水また水の世界になることもあるという。そうなれば、もはや川などという生やさしいものではなくなる。」
(岩波新書「ドナウ河紀行」加藤雅彦著より)

近寄れないので、実際には見ることができませんが、地図を見る限り、上の描写のように、すでに、ドナウ・デルタが始まっているようになっています。
対岸は、もう、ウクライナです。

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そんな中で暮らす羊飼い。道路の下にあるトンネルで、羊を、道の反対側に移動させています。

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トゥルチェアの町に入ったとたんに、雷が鳴り始め、大雨になりました。気持よく、トゥルチェアに入ろうとしていたのに、シラケてしまいます。バス停で、しばらく、待機。それでも、30分程で、雨はやみました。

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文字通り、夢にまで見た、トゥルチェアに到着しました。予想以上に大きな町です。ドナウ川に沿うサイクリング・ルートは、ここが終点です。この先、ドナウ・デルタ、そして、ドナウ河口までは、船でしか行かれません。
写真は、ドナウ川の港に面した、宿泊したデルタ・ホテル(右側)。

つづく
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110トゥルチェアにて

110 In Tulcea

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トゥルチェアに着いて、宿泊先を探しました。出来れば、旅情溢れる、港の近くに泊まりたいと思いました。河岸の真ん中あたりに位置する、レストラン付きのペンションがありました。ここで、部屋があるか尋ねたところ、満員とのことです。次に、三ツ星のデルタ・ホテルに当たりました。OKです。ここに、決めました。
写真、右側の建物が、三つ星のデルタ・ホテル。右の建物は、同じデルタ・ホテルですが、四つ星です。値段は、三ツ星が、52ユーロ(約5,200円)。四ツ星が、65ユーロ(約6,500円)。真ん中のガラス張りの建物は、レストランです。

8月8日、トゥルチェア到着。5月16日、アムステルダム出発から数えて、85日目。
累計走行距離、4,428km。

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ホテル・デルタ。手前が三ツ星。三ツ星の方が、港の眺めは、良さそう。

ドナウ川のセロメートル地点スリナを目指す、という意味では、私の自転車の旅は終わったようなものです。ここで、少しゆっくりすることにして、トゥルチェアに二泊しました。

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幸い、港を見下ろす、眺めのよい部屋に入れてもらいました。
写真は、部屋のバルコニーからの眺め。正面左側ベージュ色の高い建物のあるあたりに、鉄道の駅、バス・ターミナル、定期便の船の発着所があります。
手前に、たくさん停泊している船(または船乗り場)は、ドナウ・デルタ観光の船です。

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日暮れのトゥルチェア港。

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朝食のレストランから見た、トゥルチェア港。

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港に面した通り。駅やバス・ターミナルに行く旅人や散策する人で、賑わっています。

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港に面した、アパート群。

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船上から見た、アパート群。

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ドナウ・デルタ遊覧船乗り場で、釣り糸を垂れる人たち。

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釣り糸を垂れるひとたちを見る人たち。

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ホテルのレストランで食べた豚肉。こんなおいしい豚肉は初めて!という代物でした。

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ホテルの向かいにあった、民族博物館。

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これも、ホテルの向かいの美術館の庭にあった石像。

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鉄道駅の近くに展示してあった蒸気機関車。

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駆動輪が五個あり、日本式に言えば、E型ですが、日本には、CやDはありますが、Eというのはないのでは?

プラハで自転車のフロント・バッグを盗まれて、その中に、帰りの飛行機の予約券も入っていました。そのため、ブカレスト発の飛行機の出発時刻が分からなくなってしまいました。ホテルに旅行代理店が入っていました。そこで、時間を調べて貰いました。女性事務員が、親切に調べてくれました。
「あなたの予約は、ブカレスト発8月26日17:05、ロンドン着18:30、BA887便です。」
ルーマニアは、ロンドンとは、2時間の時差があります。

つづく

111ドナウ・デルタ、ヨーロッパ最後の秘境

111 Dabube Delta, the last mysterious land in Europe

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ウイーンからドナウ・デルタまでのドナウ川。
トゥルチェア Tulcea から、ドナウ・デルタが始まり、黒海に注いでいます。

ドナウ・デルタは、ヨーロッパ最後の秘境と言われ、世界自然遺産にも登録されています。

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ドナウ・デルタ、トゥルチェアからスリナまでの拡大図。
トゥルチェアで、ドナウ川は、三本の大きな分流に分かれています。北から、キリア分流、スリナ分流、聖ゲオルゲ分流です。キリア分流は、ウクライナとルーマニアの国境になっています。
トゥルチェアからスリナまで、おおよそ、70kmあります。

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宿泊したホテル・デルタの前のドナウ川。
ホテルの船で、ドナウ・デルタ観光ができるというので、トゥルチェア二日目に参加しました。フルコースのランチ付きで、40ユーロ(約4,000円)。時間は10:00~16:00。

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ホテルの船。

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結構大きな船で、レセプションに集まった客は十名程度。採算が取れるのかと心配していたら、同じデルタ・ホテルの四つ星のほうから、ドイツ人の団体客が大勢乗って来ました。成程。

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船が港を離れます。丘の上に建つ塔は、独立記念碑です。

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初め、スリナ分流を通り、細い支流へと入ってゆきます。

"Romania-Eye"というホームページによると:

ドナウ・デルタの面積は、3,446平方km。東京都の約1.6倍。
200種以上の植物、
300種以上の鳥類、
100種以上の魚がいるそうです。
世界中の白いペリカンの50%がここにいて、何千羽のペリカンが、いっせいに飛び立つ姿は、圧巻だそうです。

季節によるものか、船のコースによるものか、この日は、鳥の姿は、ほとんどありませんでした。船はトゥルチェアの港から20kmくらい、足を伸ばした程度です。

次に、訪問したドナウ・デルタの写真を列挙します。

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ここは、秘境中の秘境で、船も入ることができません。しかし、鳥の姿は、わずかしかありません。白く見えるのが、鳥です。

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昼食は、階下のレストランで。
昼食後は、お腹がいっぱいになったのと、川と柳と葦(アシ)の単調な景色に、みんな昼寝の時間になりました。

つづく

112スリナへの船は超満員

112 The overflowing boat to Sulina

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ドナウ・デルタ。トゥルチェアからスリナまでは、約70kmあります。この間は、船でしか、行くことができません。

ドナウ川は、その距離を表すのに、源泉からではなく、河口からの距離で表します。河口の起点がスリナです。ドナウ川サイクリング・ルートを走る者としては、そのゼロ・メートルの起点を是非訪れたいと思います。それが、スリナです。登山で言えば、頂上を極めるようなものです。自転車で行けないのは、ちょっと残念ですが、船で行かざるをえません。

サイクリング・マップbikeline によれば、スリナのユースホステルにキャンプ場があります。最悪のことも考えて、テント・寝袋・マット・洗面用具だけ持ちました。自転車と他の荷物は、ホテルに預かっておきました。

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スリナ行き船の切符売り場は大混雑です。
切符は、片道42レイ(約1,050円)。12:30乗船開始、13:30出発、とのことです。スリナまで、3時間かかります。
この船は、一日一本です。この船が、トゥルチェアに戻るのは、翌朝07:00です。他の船会社の高速船もあるようですが、基本的に日帰りは難しいです。

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船やバスの待合室の隣にある、レストラン。ここも大混雑です。

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スリナのイメージは、うらさびれた寒村と思っていましたから、船も、何十人くらいの乗客の小さいものだと思っていましたが、予想以上に大きい船で、何百人の乗客がいて、イメージとひとけた違いました。

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乗船を待つ人たち。

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いよいよ乗船が始まりました。船が沈没するのではないかという、大混雑です。

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幸い、後部デッキに、空いているイスを見つけました。

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座れないで立っている人もいます。定員オーバーでしょう。

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トゥルチェアからスリナまで、スリナ分流を行きます。大きな貨物船とも、すれ違いました。

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座っている席とデッキ手すりの間に、何人ものひとがいるので、身動きがとれません。長い長い、三時間でした。

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そろそろ、スリナに到着です。

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到着すると、ペンションの呼び込みがいました。ここには、三泊するつもりです。初め、一泊だけ、呼び込みのペンションにして、あとの二日は、ユースホステルのキャンプ場を見てから決めようと思いました。しかし、ペンションに行く途中に、ユースホステルがあって、子どもたちが大勢泊まっていたこと、テントを張る場所が狭いこと等が分かったので、キャンプは諦めて、ペンションに三泊することにしました。
憧れのスリナに着きましたが、すっかり疲れ果ててしまいました。
写真は、ペンションの入り口。

つづく

113「ドナウの旅人」

113 Travellers along the Danube

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スリナのペンションの部屋。

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部屋の壁に架かっていた絵のオリジナル。ブカレスト国立美術館にて撮影。
ペンションの部屋で見て、いい絵だな、と思って、時々、見ていました。後日、ブカレストの国立美術館で、この絵がありました。同じ画家のものが、何点か、飾られていたので、ルーマニアでは、有名な画家なのでしょう。

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ペンションの部屋の天井。

ペンションの主人(下船したとき、呼び込みをやっていた男性)が、日本語を少し話します。
「どこで覚えたのですか?」
と尋ねました。
「日本の小説で、スリナのことを書いたものがあり、それを呼んだ人たちが、たくさんきて、うちに泊まります。」
とのことでした。
日本の小説というのは、宮本輝の「ドナウの旅人」のことでしょう。そんなに、影響力があるものかと、驚きました。「ドナウの旅人」は、今から30年程前、1983年から85年まで、朝日新聞に連載された小説です。現在、新潮文庫(上下二巻)で、読むことができます。次のような、ストーリーです。

母親が、若い男と出奔します。どうやら、ドナウ河沿いに旅をしているとの情報をつかまえました。母親を連れ戻すべく、その娘が、ドイツ人の元恋人と、フランクフルトから追いかけます。ドナウ川を下りながら、追跡劇が始まり、どこかで、娘グループは、母親グループを、見つけます。母親は、ドナウ河口のスリナまで、つまり黒海まで、どうしても行きたいと言い張ります。そこで、今度は、四人一緒の旅が始まります。そして、とうとう、冬のスリナに着くのですが・・・

ストーリーは、別として、ドナウ川沿いに旅する者にとっては、途中途中の町の情景がわかり、それだけで、面白いものです。ただ、「ドナウの旅人」は、自転車ではなく、車や、鉄道で、旅するので、途中経過が大きく飛んでしまうのは、仕方がありません。

念のために、新潮文庫に掲載されている地図のコピーを、次に、載せておきます。地名の出ている個所が、小説の中に出てくる、主な場所です。

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源流から、ブダペストまでの、ドナウ川。

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ノヴィ・サドからスリナまでのドナウ川。

それにしても、30年前の、この地図を見て驚くのは、ヨーロッパの、この辺りの変りようはどうでしょうか!チェコスロバキア、ユーゴスラビア、ソ連はいくつもの国に分裂し、共産圏は、EU圏になってしまいました。小説の作者も、小説の登場人物も、ブルガリアでしたか、パスポート・コントロールで手間取り、頭にきていましたが、今はもう、こういう経験はしなくてすむでしょう。

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ペンションの庭のスモモ(?)。下の写真も。

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ペンションで、スモモから酒を造っているところ。

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その酒をごちそうになりました。強い酒で、アルコール度は、50%くらいありそうです。

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ペンションの隣の家。泊まったペンションは、スリナの街から、スリナ海水浴場へ行く途中にあります。

つづく